精管・精嚢・射精管・前立腺

(ここで使っている図版はすべてWikimedia Commonsで著作権フリー素材として提供されているものをお借りしました。)

精管=精子を運搬するベルトコンベアー

精管は精巣上体尾部に蓄えられている精子を射精に備えて前立腺部まで運ぶ役割をします。陰嚢の中にある精巣・精巣上体・精管は血管や神経とともに鞘状の被膜に覆われて精索と呼ばれる束を形成し、鼠径部から腹腔内へ入ります。そして膀胱の上側を回り込んで前立腺の背面側に接続しています。その全長は引き伸ばすと約40cmにも達します。

精索の被膜には筋層が発達しており、精巣挙筋と呼ばれます。この筋肉は精巣を体の方へ引き上げる働きをします。気温が低くなると精巣を体に引き寄せて温度を上げ、気温が高くなると逆に体から遠ざけて温度を下げます。また極度の緊張や恐怖を感じたときにも精巣が吊り上がる現象が見られますが、これは精巣を体に寄せて保護するためと考えられます。それ以外にも射精の際、オーガズムが近づくと精巣が体の方へ引き寄せられる動作が見られます。これは射精に備えて精子を前立腺部へ送り込むための準備と考えられます。

精管は直径3.0~3.5ミリ程度の円形の管で、きわめて厚い筋肉の層でできています。その内径は外径に比してとても狭くなっています。精管を形成する平滑筋が蠕動運動を起こすことにより、精子は精巣上体から前立腺部へ高速で運ばれます。射精される前の精子は自分で動くことができないため、精管自身がうねうねと動くことによって効率よく運搬しているのです。

精管が前立腺部に接続する部分は紡錘形の袋状になっており、これを精管膨大部と呼びます(下図参照)。精管膨大部まで運ばれてきた精子は射精の直前まで一時的に待機します。

膀胱の背面側から見た精管膨大部・精嚢・前立腺

精嚢=精子に栄養源を補給する

精嚢は膀胱の背面側に張り付くように付いている袋状の器官で、長さ4~5センチほどの細長い紡錘形をしています。その内部にはひだが発達して、小さな部屋に分かれています。下図は精嚢や前立腺を上側(膀胱側)から見たところで、精嚢の断面も示されています。

膀胱側から見た前立腺・精管膨大部・精嚢

精嚢の主な役割は、精子が運動するために必要な栄養分を含む精嚢液を分泌することです。この液体はやや黄色味を帯びて粘性が強く、成分として果糖を多く含みます。精嚢液は精液の約70%を占め、精液独特の粘り気のもとになっています。よく誤解されるのですが、精嚢は精嚢液を分泌する器官であって、精子を貯める場所ではありません。精管からごく少量の精子が紛れ込むことはありますが、通常精嚢内に精子は存在しません。また精嚢の外壁には筋繊維が発達しており、射精時には収縮して内容物を射精管へ噴出します。

射精管=精子と精嚢液の専用通路

精管膨大部と精嚢の出口は非常に細くなっており、前立腺に入る直前で合流して射精管となります。射精管は前立腺を後ろ側から貫いて斜め下へ向かって進み、中心で尿道に開口します。下図は前立腺を前側から見た断面を示しています。

前側から見た前立腺・精管膨大部・精嚢・尿道前立腺部

前立腺の中央を尿道が貫いており、その中ほどに精丘と呼ばれる小さな膨らみがあります。射精管の長さは2センチほどで、その太さは終端に近づくほど次第に細くなっています。そして左右から来た射精管は中心線へと収束し、精丘の両横に垂直の割れ目のような形で尿道に開口します。この部分を射精管口と呼びます。射精時には射精管を通して精子と精嚢液の混合物が尿道前立腺部に流入します。

前立腺=精液のミキサーと発射ポンプ

膀胱のすぐ下側で尿道を取り囲むようにくっついている器官で、栗の実を逆さまにしたような形をしています。大きさも栗の実とほぼ同じです。膀胱に近い上側は平らに近く、下側はやや尖った形状になっています。前立腺の中を通る尿道は尿道前立腺部と呼ばれ、その長さは4センチほどあります。尿道前立腺部の中ほどに精丘と呼ばれる膨らみがあり、その両横に射精管口が開いています。

前立腺は射精において中心的な役割を果たします。第一の役割は精液の一部となる前立腺液を分泌することです。前立腺液は乳白色の弱アルカリ性の液体で、精液の約25%を占めます。前立腺液の成分には酸性フォスファターゼ、クエン酸、亜鉛などが含まれます。精液独特の匂いは前立腺液に含まれるスペルミンという物質によるものです。前立腺液の役割は精子を活性化したり、栄養分を与えることです。射精される前の精子は休眠状態にあり自ら運動しませんが、前立腺液と合わさることにより活発に動き始めます。またタンパク質を分解して精液を液状化する働きをするセリンプロテアーゼという酵素も含まれています。射精されたばかりの精液は粘り気がありますが、しばらく放置するとサラサラの液状になるのはこのためです。それ以外にも膣内の酸性を中和したり、膣の運動を促進して受精を助ける働きもあると言われていますが、その役割はまだ十分に解明されていない神秘の液体でもあります。

第二の役割は精液を尿道へ送り出すポンプとしての働きです。前立腺はすべての分泌物が合流する場所であり、精子・精嚢液・前立腺液の3つが混合されて初めて精液となります。前立腺には分泌腺とともに平滑筋繊維が発達しており、射精時には規則的に収縮を繰り返して精液をペニスへと勢いよく送り出します。

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