射精のしくみ

射精の誘因

膝を叩くと脛が跳ね上がるのと同じように、射精も反射の一種です。反射とは自分の意思とは無関係に起こる不随意的な反応のことです。射精の反射は交感神経の支配下にあり、脊髄の腰椎という部位にある射精中枢から指令が発せられることにより起こります。射精は主に亀頭冠への刺激によって誘発されますが、刺激の強さよりも一定量の刺激が継続的に蓄積することが必要条件で、刺激の総量がある限界値を超えると腰椎から生殖器を取り巻く筋肉群へ射精指令が発せられます。しかし夢精のようにペニスに物理的刺激を与えることなく、精神的な興奮だけでも射精が起こりうることから、大脳から射精中枢へ直接働きかける回路も一部残っていると考えられます。一度射精指令が発せられるとあとは射精へ向かって一気に突進していくため、もはや自分の意思で止めることは不可能になります。射精のメカニズムが発動してもう後戻りできなくなる時点のことを不帰点(point of no return)と呼びます。

射精の二段階

通常、射精といえば尿道口から精液が放出される瞬間をもって始まりと考えていますが、実はそれよりも十数秒前から射精に向けての準備が体内では行われており、これを射精の前段階と呼んでいます。ですから医学的にはこの前段階も含めた一連の動作を射精と考えるのが自然です。

射精に関係する筋肉群

勃起が血液の働きで起こるのに対して、射精は筋肉の働きで起こります。射精のメカニズムには前立腺が特に深く関わっていて、中心的な役割を果たします。以下に前立腺周辺の断面図を示します(精管・精嚢・射精管・前立腺のページも合わせてご覧いただくと一層理解が深まります)。

前立腺・射精管・尿道

前立腺の中を尿道が貫いており、さらに体の後ろ側から射精管が合流してきます。この射精管は精管・精嚢とつながっていて、精子と精嚢液の混合物が通過します。

前立腺を挟むように、前後に2つの尿道括約筋が存在します。一つは膀胱の出口にあるもので、内尿道括約筋と呼ばれます。もう一つは前立腺と尿道球との間にある尿生殖隔膜を通る部分を取り巻く外尿道括約筋です。このうち随意的に動かせるのは外尿道括約筋の方で、これを弛緩させることにより排尿が可能になります。

下図は会陰部(陰嚢と肛門の間の部分)を下から見たところです。ペニスの根元にある尿道球と呼ばれる海綿体の部分を取り巻くように付いているのが球海綿体筋です。球海綿体筋は随意的に動かすこともでき、射精の際には脈動的に収縮して精液の放出を助けます。

会陰付近の解剖図

(この図版はWikimedia Commonsで著作権フリー素材として提供されているものをお借りしました。)

射精のメカニズムには内尿道括約筋・外尿道括約筋・前立腺自身の平滑筋、そして球海綿体筋が中心的な役割を果たしています。射精の際にはこれらの筋肉が一斉に動き出すとともに、きわめて精密なタイミングで制御され、精液を体外へ放出するのです。

射精の前段階

射精直前の反応

性的な興奮が高まってくるとだらんと垂れ下がっていた睾丸は次第にペニスの根元の方へせり上がってきます。そして射精直前になると睾丸はペニスの根元に張り付いたようになります。これは精子を精管膨大部まで送り込むための準備動作と考えられます。この時点で男性は射精が近いことを自覚し、外から見ても射精の兆候であることがわかります。この段階ではまだ射精指令は発せられていないので、興奮を抑えてやればギリギリ止めることは可能です。

また尿道球腺(カウパー氏腺)からは透明な粘液が盛んに分泌され、尿道口から滲み出してきます。これは尿道を潤して精液が通りやすくするとともに、尿道内に残っている尿を排出して酸性を中和するためと言われています。精子は酸性に弱いため、精子を保護する働きをしているわけです。

精子の移動

性的な興奮が限界に達すると射精中枢から射精指令が発せられ、射精のプロセスが発動します。つまり「あぁぁぁ、イクぅぅ~~」と言って絶頂に達している時期に当たり、ここまで来るともう止めることはできない状態になります。。これが射精の約5秒前です。

射精のプロセスが発動すると、まず精巣上体尾部に蓄えられていた精子が精管を通って前立腺の後ろにある精管膨大部まで移動します。精管には平滑筋が発達しているため、その収縮による蠕動運動でうねうねと動くことにより、精子はわずか数秒の間に精管膨大部まで移動して射精の瞬間まで待機します。

前立腺周辺の動き

下図は射精の前後における前立腺周辺の動きを示したものです。まず1)収縮期をご覧下さい。

射精時の精液の流れ

射精のプロセスが発動すると、まず膀胱の出口にある内尿道括約筋が収縮します。これはもともと膀胱から尿が漏れないようにせき止めている筋肉ですが、それがさらに強く収縮することにより、精液が膀胱側に逆流するのを防いでいます。これにより尿路は完全に遮断され、尿道は精液専用の通り道になります。射精直後に尿が出にくいのはこの内尿道括約筋がまだ十分に弛緩していないためです。

次に外尿道括約筋も強く収縮して尿道の出口をせき止めるとともに、前立腺下部の尿道が大きく拡張して空間が生じます。この空間の中へ前立腺から分泌された前立腺液が充填され、さらに射精管からは精子と精嚢液の混合物が流れ込んできます。こうやって初めて精液と呼ばれる液体がこの空間内に充満します。

射精の段階

上図の2)放出期をご覧下さい。前立腺下部の尿道に精液が充満し、圧力が高まると尿道をせき止めていた外尿道括約筋が開放され、同時に前立腺が収縮して内容物を一気に押し出します。これが狭い意味での射精の始まりです。尿道球部に入った精液はさらに球海綿体筋が前後に収縮することにより、勢いよく外尿道口へと送り出されます。

一回の射出が終わると再び収縮期に戻り、以下同じ動作を十数回繰り返します。外尿道括約筋や球海綿体筋がドックンドックンと脈動的に収縮し、最初は約0.6秒間隔で、あとは一回ごとに約0.1秒ずつ遅くなっていきます。精液の射出は通常10回前後に分けて起こりますが、精液の射出が収まった後もさらに5回前後のゆるやかな収縮が見られます。自覚はしていなくても、射精中に会陰部を指で押さえてみると球海綿体筋が収縮しているのが確認できます。

射精時の脈動回数は多少の個人差はありますが、精液の射出を伴わないものも含めておよそ15~20回前後と決まっています。最初の射出から脈動が収まるまでの時間はほぼ15秒です。その後、性的な興奮は急速に消失し、同時にペニスの勃起も解消されます。またペニスの根元まで吊り上がっていた睾丸は徐々に元の位置に戻っていきます。

射精が終わった後、一時的に性的な興奮を受け付けなくなり、ペニスが勃起しない期間が必ずあり、これを不応期と呼んでいます。個人差や年齢による差はありますが、ほとんどの場合10~15分経つと再び勃起が可能になります。

射精の過程で見られる精液の成分変化

精液は全体の約70%が精嚢液、約25%が前立腺液、そして残りの約5%が精子やその他の分泌腺からの液体で成り立っています。しかし、これらがすべて一様に放出されるわけではありません。出てきた精液を眺めると、不均一であることからもわかるでしょう。それぞれが別々に時差をおいて放出されるのです。このうち精子は射精の初期の段階で放出され、最初の1~2回の射出で最も濃度が高く、それ以後は徐々に濃度が下がっていきます。前立腺液もほぼ同様の傾向です。一方、精液の大半を占める精嚢液は射精の終わりの段階で放出され、3回目以降の射出で精子の濃度が下がるのとは逆に精嚢液の割合が増え、最後はほとんど精嚢液ばかりになります。このことは精液の色の変化に注目すると、最初は白っぽかったのが徐々に黄色っぽくなっていくことからも確認できます。

精液の量

一回の射精で放出される精液の量は個人差や体調によっても左右されますが、約1~10ml程度とかなり幅があります。前回の射精からの間隔に左右されるとも言われますが、明確な因果関係は不明です。それよりも興奮度によって大きく左右されると思います。一回ごとの射出量は概ね人によって決まっているので、精液の量は収縮の回数に比例します。つまり興奮が強ければ強いほど収縮回数が多く、たくさんの精液が放出され、オーガズムも長く続くことになります。

動画による射精の解説

英語ですが、とてもわかりやすいアニメーションです。

射精中の体内の様子を解説した動画も合わせてご覧いただくとより実感が湧きます。

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